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悪いけど君には、いつか僕の腕の中で死んでもらうよ。 僕が笑ってそう言えば、君は 怯えたように目を見開いたりするのかなぁ 01.Egotism 「離してください」 「嫌だね」 「離して」 「嫌だ」 「本当にやめ―――――っ!」 振り解こうとする手首をまた押さえつけて、すぃ、と目を細める。 すると彼女ははっと口を噤んだ。 彼女の左腕に抱えられた分厚い教科書たちを片手で叩き落とすと、非難するような目で僕を見る。 「いい加減にやめてもらえますか」 「何を?」 「もうからかわないでください」 「からかってる?」 「嫌なんです。こういうの」 「どうして?」 つい、と不愉快そうに目を細めると、彼女は僕から目どころか顔を逸らした。 彼女は振り上げかけて僕に掴まれた右腕に更に力を込めると、僕の手を思い切り振り払った。 教科書を拾い集めるためにしゃがみ込もうとする肩を掴んで強引にこちらを向かせる。 唇にひとつ触れるだけのキスを落とすと、彼女は顔を真っ赤に染め上げて「最低」と呟いた。 「おかえり、ジェームズ」 談話室を無言で通り過ぎようとして、リーマスの声に呼び止められる。 「どうしたんだい?何か楽しいことでもあったの?」 「・・・いいや。リーマス、君こそ機嫌が良さそうだけど?」 「さっきマクゴナガル先生に良い紅茶を頂いたから、かな」 そっか、と言ってソファの方へと足を進める。 すると3人掛けのそれにシリウスがぐったりと横たわっていた。 「やぁパッドフット。お疲れのようだね?」 そう声を掛けると、彼は右手を上げるだけの挨拶をした。 「さっきもまた女の子たちに囲まれちゃって・・・大変だったんだ」 後ろから声が聞こえて振り返る。 片手に水の入ったコップを持ったピーターが、哀れむようにシリウスを見ていた。 「もうそろそろバレンタインが近いからかな?」 「そうだと思うよ。シリウスはそこそこ仲の良い子からしか受け取らないからね」 リーマスが紅茶を口に運びながら言う。 「少しでも仲良くなって、チョコレートを受け取ってもらいたいんだろうね」 ここホグワーツでは、バレンタインデーに女生徒が男子生徒にチョコレートを贈るという、 東洋風のイベントがいつの間にか定着していた。 この日になるとシリウスはいつも女子に埋もれて見えなくなってしまうから(僕は二番人気)、 僕たち3人はいたる所で足止めを喰らいつつ彼を放っておく(ちなみにリーマスは三番人気)。 ・・・・・・・・・そういえばって、日本人、だっけ。 ふと暖炉から目を離すと、ひとつの視線に気がついた。 「何だい?リーマス」 「いや、何を考えてるのかなぁと思って」 そういうと彼はにっこりと笑んだ。 僕はリーマスの、この見透かすような微笑みが苦手だ。時々三日月のように口角を上げる。 「さんのことでも考えてたの?」 ―――――一瞬、息が止まった。 「何、誰だって?」 さっきまでくたばっていたはずのシリウスが、前に乗り出して先を促す。 「・。寮はレイブンクローで、僕らと同じ5年生」 小首を傾げながらリーマスがつらつらと読み上げるかのように言う。 「ジェームズ、君のお気に入りだろう?」 「知らないな」と僕は知らない振りをする。「どんな子なんだい?」 「それは・・・、君がよーく知ってると思うんだけど?ジェームズ」 ―――・。 所属寮は知性溢れるレイブンクロー。学年は5年生。両親は父親が純血の魔法使い、母親が混血。 僕は彼女の身の上についてはそういったところしか知らない。 流れるような黒髪と白い肌。華奢な体つき、折れそうな細い手首。 これは彼女を見ていれば一目瞭然な外見だ。 そして怯えているような悲しそうな瞳と、虚勢を張る言動。こういったところは彼女と接触したことのある人間のみ気づくだろう。・・・・・・もっとも、勘の鋭い人間に限定されてくるんだろうけど。 ピーターがきらきらと瞳を輝かせて言う。 「さんかぁー・・・たまに見かけるけど、可愛いし、明るいし、いつも笑顔で素敵な人だよね」 ・・・・・・ほら、例えばこういう風に。 リーマスがじっとピーターの様子を見つめて、僕に向かって肩をすくめた。 みんななーんにもわかっちゃいないんだ、と、そういうニュアンスで。 熱帯魚の尾ひれのような漆黒の髪を手繰り寄せる。 は一瞬痛そうに眉をひそめて、僕の顔を見た途端に不機嫌そうに目を瞬かせた。 「今日は何の用?」 「特に無いんだけどね、いつも。ただこれを見たら、引っ張ってみたくなっただけ」 指から逃れようとする一房をもう一度絡めて口付ける。 俯いたまま見上げると、眼鏡のレンズを通さない世界が見えた。 「・・・その瞳の色、」 ぼやけた視界でが口を開く。 いつも「やめてください」とか「触らないで」とかしか言わない声が少し和らいで、僕は少なからず驚いた。 「瞳の色?」 「・・・何でもないです。授業に遅れるわ。離して」 手に持っていた教科書で僕の体をぐいと押しやると、 彼女は先に行ってしまった友達の後を追おうと僕に背を向けて歩き出した。 その腕を掴んで近くの柱の陰に引っ張りこみ、どんと壁に押し付ける。 「僕のことが―――嫌い?」 がはたと僕を見上げた。 自然に口から零れ落ちた言葉に自分で驚愕したけれど、必死に平静を装う。 「・・・ねぇ、あなたって―――――」 は視線を僕の眼にじっと定めたまましばらく黙って、やっとそう口を開いた。 あなたって、 「ジェームズ」 の言葉を遮った、けれども聞き慣れた声に呼ばれて振り向く。 「こんなところにいたんだ、」そこにはいつもの微笑み。「捜したよ」 僕は壁についていた両手を離してリーマスの方へ向き直った。 リーマスは体を少しずらして、僕の肩越しにを覗き込む。 「初めまして、さん」 「初めまして、ルーピン君」 「ルーピン君だなんて。リーマスでいいよ」 「・・・ええ、それじゃあわたしも。でいいわよ、リーマス」 は僕の横を過ぎると、リーマスと軽い会話をして去って行った。リーマスはその背中を見送ったあと、ふと僕の方に向き直って何やら可笑しそうにくすくすと笑う。 「普通に接すれば、彼女あんなにフレンドリーなのにね」 「・・・僕の接し方が異常だとでも言いたいのかな?リーマス」 「『異常』・・・うーん、そうだね。『非常』というには度が過ぎてるし」 ――――異常、か。 僕は浅く俯いて、静かに自分を嘲笑う。 もう一度くすりと小さく笑うと、授業に遅れるよ、早く行こうとリーマスは僕を促した。 [murmur] 初!鹿夢でございます。 あーここで鹿って書くのも初めてだ。いつも眼鏡(くん)呼びしちゃってた。 この人書くの初なのに凄い影ある人っぽくなっちったよorz キャラ違ってすみませ・・・。 「01」付くからには「02」ももちろんありますので、お楽しみに! [080211] |