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「!こっちよ!」 振り返ると、集団の向こうにリリーの美しい髪がひらひらと垣間見えた。ぴょんぴょんと跳ねて手をひたすら振っている。は別れを惜しむ家族たちや友達との会話に花を咲かせている生徒たちの間を掻き分けて、そちらに押し進んだ。 「もの凄い人ね。この汽車に全員納まるのかしら?」 ぜいぜいと肩を上下するの肩を軽く叩きながら、リリーはホームのずっと向こうへ目をやった。セブルスはリリーのその言葉にわからない、といった風に肩をすくめた。 「とりあえず乗ろう。席がなくなると困る」 「そうね」 「、落ち着いたか?」 「うん、もう……大丈夫。ありがとう」 ふう、と深く息を吐くと、はトランクの持ち手を強く握り締めた。 ―――遂に、遂にこの日がやって来た。真紅の汽車に乗って、知らない世界へと旅立つ日が。今までに見たことのない、出会ったことのないありとあらゆる不思議が、この線路の先に待っている。背負い続けてきた過去をようやく、忘れる日々がやって来る。 コンパートメントのひとつを覗き込んだリリーが、「やったわ!と歓声を上げてとセブルスを振り返った。ふたりはその報告にどちらからともなくにっこりと笑みを交わし合うと、リリーに続いた。 「貸し切りだね」 「もうずいぶん後ろまで来たんだもの。努力が報われたんだわ」 「そうだな」、セブルスはそう言うと、浅く座り直してうつむいた。「僕、疲れたから寝る」 「えー!」 が抗議の声を上げると、セブルスはちらりと目を上げてため息を吐き、深く座り直した。 「仕方ないな。あと1時間したら寝るよ」 「ありがとう、セブルス」 「何して遊びたいんだ?携帯チェスでもするか?」 「するー!」 その返事に、セブルスはトランクの上に置いていた鞄をごそごそと探り文庫本ほどの木箱を取り出した。窓際に備え付けの小さなテーブルにそれを置く。がすかさず杖を取り出して叩くと、ぱかっと開いてミニチュア版のチェス盤と駒たちが姿を現した。そこまでは魔法っぽいのだが、実はこのチェスセットはゲームの際は手動なのだ。 「じゃあ私は教科書でも読もうかしら」 「リリー、チェスしないの?」 「セブルスが寝てから付き合うわ」 まぁ、寝られたらの話だけど、と心の中で付け足してリリーは密かに微笑を浮かべた。はい、はい、と駒を動かしているうちにいつの間にか勝ってしまっている。セブルスはそんなに負ける度に、また勝負を申し込みたくてがチェスをするように仕向けるのだ。今日もまたいつもの繰り返しだろう、何試合続くのかしらとリリーは始まったばかりのゲームを眺めながらくすりと笑う。そしてしばらくそうしたあと、床に置いたままだったトランクを少し開けて、『魔法薬学』用の教科書を取り出し優雅に足を組んだ。 |