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「同じ部屋で良かったわ!」 ぎゅーっとリリーに抱きつかれて、は安心したようにふと溜息を吐いた。そして抱きつかれたまま抵抗もせずに部屋の入口から全体を見渡した。深紅のカーペット、同じく深紅のビロードで金糸の飾りのついたベッドの天蓋とカーテン。ベッドカバーも深紅だ。各ベッドの横にある小さなチェストには、グリフィンドール用の制服一式が揃えられていた。ベッドは5つ円形の部屋に等間隔で並んでいるが、荷物はとリリーの2人分しか運び込まれていなかった。 「しかも2人だけなんて最高の贅沢ね!偶然だろうけど、校長先生に感謝しないと」 「そうだね……」 「あら、ったら嬉しくないの?」 「嬉しいよ!好き放題使えるなら、どう改造しようかなって考えてたんだ」 「改造!良いわね」 そう言うとリリーはぐるりと部屋を見渡して、を振り返るとにやっと笑った。 「じゃあまず、真ん中のベッドはそのままで残りの4つを2つずつくっつけるのから始めましょうか?」 「それって……」 「そうよ、」、リリーの明るい瞳がいっそう輝く。 「ひとりダブルベッド?」 「ひとりダブルベッドよ!」 「さんせーい!」、そう叫ぶや否や、はベッドに駆け寄った。 とリリーはうんうん言いながら、それでも楽しそうに笑いながらベッドを2つずつくっつけてそれぞれのダブルベッドを完成させた。ふたりは歓声を上げてそこへ飛び乗った。 「わたしたち以外に、ダブルベッドに寝てる人っているのかなぁ?」 「いないでしょうね。私たち限定よ、限定」 リリーはあぐらをかいてクッションを抱えながら不敵にウィンクした。は嬉しくなって深紅のダブルベッドを転げ回る。その姿を見てリリーは可笑しそうに笑い声を上げた。 「パンツ丸見えよ、」 「知らなーい」 「こら」 そう言いながらもリリーは相変わらずにっこり笑っている。 「魔法がちゃんと使えるようになったら、ちゃんと柱も天蓋も改造したいね」 「そうね。真ん中の柱も邪魔だし、天蓋もひとつにくっつけないとね」 リリーは物憂げにそう言うとぱたんと後ろに倒れた。もそれを真似る。 「でも、来年になってこの部屋に誰か入って来たらどうしよう」 「その時はその時よ。きちんと直せば問題無いでしょう」 「そうだね」 沈黙が下りた。は一瞬リリーが眠ってしまったのかと思ったが、しばらくしてすすり泣く音が聞こえたのでそっと体を起こした。頑張って首を伸ばして向かいのベッドを見やると、リリーはクッションを抱きかかえたまま横向きに丸まって泣いていた。ゆっくりとベッドを降りて、リリーのベッドへ近寄る。静かに腰を下ろすと、柔らかなマットがゆるりと沈んだ。 「……ごめんなさい、」 「いいよ、リリー。謝らないで」 真ん中のベッドの壁の窓から、月がじっとこちらを覗いている。 「チュニーの、ことが……まだ、……」、嗚咽が交じる言葉をひとつも逃さないように、は耳を澄ませる。 「うん、わかってる。ペチュニアのことは、きっと時間が解決してくれるよ」 「セブルスは、……大丈夫かしら?」 「セブルスはね、きっとそんなに弱くないよ。だから大丈夫。さっきだってもう同じ学年の人と喋ってたし」 「……そうね、セブルスは大丈夫よね」 先ほどよりしっかりした口調に戻ったリリーの髪を、は手を伸ばして優しく撫でた。ふわふわと手のひらに柔らかい。鳥の羽ってこんな感じなんだろうな、とは思った。 「ごめんなさいね、」 「いいってば」、と笑みを零す。「今日くらいはもうそのまま寝ちゃいなよ」 「は?」 「わたしはもう少し起きてる。おやすみ」 はそう言うと、着たままだったローブを脱いでリリーに被せた。おやすみ、小さく呟いてリリーはゆっくりと目を閉じる。泣き疲れた瞼だった。ふ、とはため息を吐く。 何よりも、リリーが泣くのを見るのが辛い。お姉さんみたいな存在で、褒めてくれて、叱ってくれて、笑ってくれる。そんなリリーが泣く姿を見るのが何よりも辛かった。きっとペチュニアはリリーのことを愛していて、だからこそどうしたって許せないのだ。羨望なのか嫉妬なのか、愛なのか憎しみなのかはわからない。きっとまだ幼い本人にもわかっていないだろう。自分のどの感情が姉を傷つけるのか。けれどお互いが傷ついていて、そしてペチュニアの言葉でリリーがより深く傷ついているのも事実。プラットホームで、はリリーを罵るペチュニアを、どうにかしてやりたいという衝動に駆られた。生まれて初めて湧いた、暴力的な衝動だった。けれど唇を噛み締めるに、ふとリリーが向けた涙に濡れた瞳は、妹を本当に愛していると語っていて、はどうしてもふたりの間に割って入ることなどできなかった。 真中にぽつりと残されたベッドに飛び乗って、両肘で顎を支える。窓から部屋を覗き込む月を今すぐ抱き寄せて、何か言葉を掛けてほしいと、そう思った。 |