ドリーム小説 月が満ちることほど美しい出来事などこの世に存在しない。


いつか敬愛していた叔父が歌うように呟いたその言葉を、
わたしは今でも宝物のように、思い出しては自分の心を暖める。

いつも使っている呪文などではないけれど、
その言葉は確実にわたしの心に届き、響きそして全ての悲しみを包んでゆく。
まるで、魔法のように。


そしてわたしはただ、あなたの秘密を知らない。




01:朝の喧騒




透明マントの中でシリウスに肩を抱かれながら、は大広間への道を急いでいた。
何故こんなことになったのかというと、彼とジェームズが悪戯を発動させる場面に出くわしたからだ。
彼らと同じグリフィンドールだというだけで、きっとフィルチは自分をもその場で尋問するに違いない。
そう思った瞬間、はこのマントの中に引っ張り込まれていた。

「シリウスー、暑いよこの中」
「うるせぇ我慢しろ。つーかお前タイミング悪過ぎなんだよ」
「何よ。そう言うならわたしの行く手に悪戯を仕掛けないでください」
「何だと?」
シリウスは歩くスピードを少し緩めると、じろりとを見た。
「ただの偶然だろ」
「わざとやったなんて言ってないでしょ。もう出ていい?」
ふんと鼻を鳴らすとシリウスは片手を持ち上げてが出られるようにしてくれた。
そしてマントを被ったまま歩き出す。
「シリウス。朝食は?」
「いらない」
「・・・朝からひと遊びしたのに?」
「・・・」


空気でぶすっとしたシリウスの表情が感じられて、は憶測で手を伸ばした。
肩のような部分に触れると、指先に感じたマントを掴んで引っ張る。
マントとの摩擦のせいでぐしゃぐしゃになった髪が現れ、不機嫌な顔が覗いた。
予想通りの表情にが思わず噴き出すと、シリウスが「何だよ」と睨む。

されるがままになっているシリウスの髪を整えながら、は「大広間、行こうよ」と誘った。
お腹空いてるでしょ?と尋ねると、今度は素直に頷いた。



!どこに行ってたの?探したのよ」
「ごめんリリー、ちょっとね・・・って、ジェームズいるし!」
「今日も爽やかな晴天だね。おはよう、
「(・・・わざとらしい・・・っ!)」
大広間に入ってすぐのテーブルで、ジェームズはちゃっかりリリーの前に座って朝食をとっていた。
が仏頂面でシリウスを見上げると、シリウスも苦虫を噛み潰したかのような顔でを見る。
「お前いつの間に・・・」
「まぁいいじゃないか。さ、座って早く食べて!」


ジェームズに朗らかな笑顔で言われリリーにも促されたので、大人しくその隣に座る。
の前にはシリウスが座った。
するとリリーの隣のピーターが「おはよう」と話し掛けてきたので、体を反らせて顔を見た。

「おはよう、ピーター」
「・・・ねぇ、食べ過ぎないほうがいいよ。今日の魔法薬学はきっと凄いから」
「え?つまりそれは・・・吐いちゃうってこと?」
「朝から汚ぇ話ししてんじゃねぇよ」
シリウスが口を挟む。
「黙ってシリウス。ピーター、今日は何作るんだったっけ?」
「胃の洗浄薬」
「シリウス、黙ってって言ってるでしょ」


シリウスを睨みつけると、リリーが「まぁまぁ喧嘩しないで」とかぼちゃジュースを注いでくれた。
「あれ、そういえばリーマスは?まだ寝てるの?」
「・・・体調悪ぃんだよ」
ぼそっと呟くと、シリウスは犬のように皿に盛ったミートパイにがっついた。
その勢いに目を見張るピーターが何だか笑える。

ふとジェームズを見ると、笑いながらも何故か彼の表情は曇っていた。




「あー・・・気持ち悪い・・・」、とぶちぶち文句を言いながらは朝日の射す廊下をとぼとぼと歩いていた。
医務室に行く?とリリーが心配して聞いてくれたけれど、
それを断って次の飛行術の授業をサボることにしたのだ。
得意な教科だけれど、あの薬の臭いを嗅いだあとに箒に乗って飛び回るほどわたしは頑丈じゃない。
は溜め息を吐くとふと廊下の突き当たりの人影に気付いた。
その人影は、立派な石造りのアーチの向こうの山奥を、じっと見つめていた。


さわさわと、の背後から追い風が吹き寄せる。
その風は人影の鳶色の髪を緩やかに揺らした。
「リーマス?」


透き通るような髪の色にある人物を思い当たって、は思わず呼びかけた。
人影がゆっくりと振り向く。


「おはよう、


春のように穏やかな声が、耳に届いた。





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01:あとがき
はい、やっと!!です!!
やっと連載上げられたよう・・・良かった・・・。
犬とのギャグみたいな掛け合いありつつシリアスにいきたいと思ってます。
(・・・む、むずかしいけど!)

[080113]