ドリーム小説
今日は満月だって誰かが言っていた。
そしてまたあの言葉を思い出す。
月が満ちることほど美しい出来事などこの世に存在しない。
叔父さん、あなたはそう言った。
満月の夜、ひどく悲しむ人がいることも知らずに。
04:埃と陽光
「リーマス」
「・・・か。どうしたの?」
昼休みの図書室には、人は数えるほどしかいなかった。
午後の日差しが差し込んだ室内には、きらきらと反射した小さな小さな埃が星のように舞っている。
リーマスは本棚に沿って隠れるように置いてあるテーブルの一番隅で、
本を読むでもなく頬杖をつきながらぼーっと本の背表紙たちを眺めていた。
・・・昨日の出来事を、彼女の漆黒の瞳を思い出しながら。
すると声が掛かり、つい訝しむように返してしまった。
「あの・・・」とが言い淀む。
「何だい?」
「そのー・・・」
「・・・」
「昨日はごめんなさい!!」
リーマスはびくっと椅子から飛び上がった。マダム・ポンフリーが物凄い形相で突っ走ってくるのが見える。
慌てての手を引っ掴むと、リーマスはドアに向けて走り出した。
げほげほと咳き込むと、ずるずると壁にもたれたまましゃがみ込む。が心配そうな顔で覗き込んだ。
「リーマス、大丈夫?」という問いに、リーマスは片手を挙げてそれに答える。
つい大声が出ちゃって、とがしゅんとすると、その手にそっと下から伸びてきた手が重なった。
はっとはリーマスを見る。彼はもう下を向いてはおらず、悲しそうに微笑んでいた。
「リーマス?」
「ありがとう、。昨日のこと」
そう言うとリーマスは、ローブの裾を軽く払い、多少よろめきながら立ち上がった。
「え?え?何が?・・・わ、危ない」
「平気平気」
まだよく状況が飲み込めないながらもが支えようとすると、
その手をやんわりと遮って「大丈夫だよ」と笑う。
「でも顔が真っ青だよ」
「大丈夫、少し調子が悪いだけだから」
「でも「いつか、」
「え・・・?」
リーマスにしては珍しく、途中での言葉を遮る。
またよろめいてとん、と壁に肩を預けた。
「いつかさ、君と、真っ直ぐ目を合わせることが出来るようになったらいいな」
「どこ見てんだよお前」
苛ついた声音に、ははっと我に帰った。そして後ろを振り向いてはぁとあからさまに溜め息を吐く。
「別にー。シリウスに関係ないでしょ」
「かわいくねーなぁ。この俺がこんなに心配してやってんのに」
「うるっさいなー」
今は占い学の授業中だ。
先程のリーマスとの会話を何度も頭の中で反芻していて、シリウスの声など頭に入っていなかった。
そして授業が終わってからも、それは一緒だった。
「さっきも言ったけどよ、お前本当に大丈夫か?」
「何が」
「何がって・・・こっちが何言っても上の空だし」
コツコツと靴と床がぶつかる音が廊下に響き渡る。
ピーターは授業が終わるなりトイレに駆けて行き、ジェームズとリリーは寮に授業の用意を取りに行った。
「ねぇシリウスー」
「あ?」
「リーマス、何かわたしに隠してる?」
思わずの方を見ると、真っ直ぐ目が合って漆黒の瞳に吸い込まれそうになる。
シリウスは狼狽えて目を逸らすと、「何でだよ」と呟いた。
「何でって、理由はないけど。何か隠してる気がするの。それも、わたしたちにとって凄く重要なこと」
シリウスはに見えない様に眉毛をハの字に下げると、どうしようかと視線を彷徨わせた。
このことは本人の口から言うべきだろう。あの、夜の姿のことは。
「・・・知らねぇよ。友達同士でも知らないことなんて、結構あるだろ」
なるべく不自然にならないようにそう独り言のように言う。
シリウスがやっと搾り出した言葉に、は少し黙ったあとに小さく頷いた。
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04:あとがき
はい、4話です。
またもや短いのですが・・・
この話は連載の節目になりつつ5話に繋がっていくものになっているので、
結構重要、かな?
[080117]