ドリーム小説
彼女は、全てを知っているように見えた。
僕の瞳を見て話すときも、
皆でどこかへ行くときに、たまたま僕の隣を黙って歩いているときでさえも。
人の奥底を、望んでいなくても見てしまうような瞳をしていた。
何もかも話してしまう前に、ひょっとしたら、気付いてくれるかも知れない。
だけどそれは僕の臆病さがそう思わせているだけで、
彼女に自身のことを話してしまえない自分がひどく憎く、虚しかった。
06:光の降る夜に
気付けば12月も半ばに差し掛かっていた。
ゆるりと訪れた寒波は、室内でもマフラーをしないと過ごせないほどの空気を連れてくる。しかし魔法で暖められるお陰で、どこの教室でも生徒たちは快適に過ごしていた。
「とは言っても、冷え切ってるわよね」
「うん。ひ、冷え切ってる」
「何がどうなってるのか僕にもさっぱりだよ」
額を寄せ合って話し込んでいるのは、リリー、ピーター、ジェームズの3人だ。彼らは談話室の隅っこの寒々しい一角で、暖炉前を陣取る3人を見つめていた。
暖炉のどまん前の2人掛けのソファには、背もたれに両肘を引っ掛けた仏頂面のシリウス。コの字型に並んだ「=」の部分の一人掛けには、リーマスとが向かい合って座っていた。リーマスは足を組んで分厚い本をぺらぺらと往復し、は何をするでもなくソファの上で体育座りをして毛布を全身に纏っている。シリウスの視線だけが、ふたりの表情をせわしなく観察する。
「みんなあの犬の恐ろしいまでの眼光にやられて部屋に引っ込んじゃったんだよね」
そのジェームズの言葉に、うんうんと他の2人が同意する。
「それにしても、リーマスはどうしちゃったのかしらね」
「わからないんだ。何だかいきなりジュンをさ、避け始めて・・・ね、ジェームズ」
「うん。もともとふたりの会話は少ないほうだったけど、リーマスが明らかにジュンを遠ざけているね」
ピーターの言葉に、ジェームズが何かを考えるように答える。
「――――そろそろ口を出さなくちゃいけない頃、かな?」
ジェームズが呟くように言うと、すかさずリリーが口を開いた。
「ふたりの間の話でしょう。いくらが可愛くても、ここは我慢しなくちゃ。この前わたし、心配で心配で『リーマスと何かあったの?』って聞いちゃったの。そしたら、とても悲しそうな顔で『何も無いよ。心配しないで、リリー』、って・・・」
話しているうちに涙目になったリリーに、ジェームズは「そ、そうだよね!」と慌てて言った。
「でも・・・」ピーターが呟く。「・・・本当に、このままでいいのかな」
「ピーター・・・」
「このままずっと隠してて、隠されてて、ふたりは苦しくないのかな」
リリーはその言葉に、ふと目を伏せた。
リーマスの秘密を知らなかった頃。月に1度たくさん怪我をして帰ってくる4人を見る度、心がひどく痛んだ。自分も友達として、彼らと苦しみを、痛みを分かち合いたかった。悲しい微笑みのわけを、どうしても知りたかった。
―――――――辛かった。
「リリー?」
「あ、いいえ。何でもないわ」
「あ・・・」
「どうしたの?ピーター・・・、あ」
「何だいふたりとも・・・、あ」
ピーターの視線の先をふたりが辿ると、そこには立ち上がったシリウスがいた。そして素早くリーマスの胸倉を掴むと、「もう付き合ってらんねぇ」と吐き捨てるように言った。
「お前はを苦しめて楽しいのか?」
「シリウス、」
「目の前にいるっていうのに・・・こいつを空気だとでも思ってんのかよ!」
「違・・・」
リーマスが眉根を寄せて否定するが、締め上げてくる手に言葉を遮られた。
「やめて、シリウス」
立ち上がるをお前は黙ってろとシリウスが一瞥するが、は目を逸らさなかった。
「言ったでしょ、あの夜。『リーマスが今すぐに話してくれなくても、わたしはずっと待ってる』、って」
その言葉に、リーマスははっと伏せていた目を上げた。
しかし口を開いたのはシリウスだ。
「『ずっと』って、いつまでだよ?」
「話してくれる気になるまで『ずっと』、よ」
「お前は十分待っただろうが。もうこいつのことで、毎日辛気臭ぇ顔しなくていいんだぜ」
「そんな顔してない」
「してる」
「してな・・・」
してない、と言いかけて、悲しそうに眉根を寄せたシリウスには一瞬言葉を失う。「・・・シリウ、ス?」
「・・・してるんだよ。リーマス、お前が本当にこいつに話す気が無いんなら、」
ぐいと更に顔を近付けると、シリウスは顔をしかめたままリーマスに何かを耳打ちした。とん、と突き離すようにシリウスが手を離すと、リーマスは小さく咳き込んだ。が慌てて「大丈夫?」と肩に手を置く。リーマスは弱々しく笑うと、その手に自分の手を重ねた。
「リーマス?」
「、ちょっと来てくれるかな」
「え・・・」
の返事も待たずに、リーマスはぱっと手を離して踵を返す。シリウスの方を振り返ると、その表情はもう穏やかで。少し眉根を寄せながらも、行って来いと頷いた。
も小さく頭を縦に振ると、太った婦人の方へ歩き出したリーマスのあとに続いた。
Next(coming soon...)
06:あとがき
ええと、もう本当にやっとこさの更新です!
短いのですが、何とかup出来て良かった…。
[080329]