「リリー?」
どこからどう見たって彼女なのはわかっているというのに思わず尋ねてしまったのは、そのひとがあまりにも意外な場所にいたからだった。
彼女は穏やかな湖のほとりで、落ち葉に埋もれていた。






秋のそらいろ






リリーはにこりと優しく微笑って、いつもとは全然違う頼りなさ気な声で言った。
、あのね。

「喧嘩しちゃった」

わたしは黙ってその横に座り込んで、
寝っ転がったままのリリーのローブから落ち葉を払った。
ふたりが喧嘩をしているのは、さっきジェームズから直接聞いて知っている。
息を切らせたジェームズ。

『どこにいるか知らない?』

そう問われて、わたしはぶん、と首を振った。
眼鏡の奥の瞳が悲しそうに俯いたのを、わたしは見なかったことにした。


わたしはふたりが仲良しなのは好きだけど、
リリーがジェームズに会いたくないと思っているときはリリーをジェームズには会わせない。
例え居場所が予想出来ようとも、まず話さない。
ジェームズとも友達だけど、リリーの方が大切なんだ。

ごめんね、ジェームズ。もう少し待っていて。





「今日という今日は許さないわ」
何度聞いた台詞だろうと思わず噴き出すと、がばっと起き上がったリリーに頭を小突かれた。

「何笑ってるのよ。私本気よ、本気」
「はいはい」
!」

もう、と言うとリリーはまた落ち葉のベッドにその身をうずめた。
翠色の瞳が潤むのを、わたしは見逃さなかった。

「きっと泣いてるよ、ジェームズ」

そんなわけないでしょと彼女は向こうを向いてしまう。
「半べそで探し回ってたりして」、そう言ってわたしはリリーに気付かれないようにそっと学校を振り返った。
アーチ状になった入り口の柱に、黒髪の少年が微笑を浮かべてもたれている。

手はずはこう。
わたしはリリーの居場所が予想出来たら、こっそりジェームズの親友の誰かにそれを伝える。それだけ。
リリーとわたしが少し話をしたところへ、頃合いを見てジェームズが連れられてきて、わたしとバトンタッチ。
彼女の居場所よくわかったね、そう言ってみんなわたしを褒める。
だけどそんなの、リリーのことをよく見てあげていれば、誰にだってわかることなのに。

そうして親友(今日はシリウスの番)の陰から、情けない顔をしたリリーの恋人が現れた。

「ほら、やっぱり半べそだ」

リリーががばっと起き上がって、両手をついて城を振り返る。
涙目をいっそう潤ませると、ぷいと前を向いた。
わたしは立ち上がると、それを合図に駆け出したジェームズに親指を立ててみせた。
彼はすれ違い様、ウインクをして「ありがとう」と小さく笑う。


「お疲れ様です」
声を掛けると、シリウスは大袈裟に溜め息を吐いて遠くで抱き合うふたりを見やった。
「・・・ったく。あいつらには世話が焼けるよな」
「ほんとにね」
何だか可笑しくなってにやにやしながらシリウスを見上げると、真面目な顔の彼がいた。

「俺らもする?」
「何を?喧嘩?」
「あれ」
シリウスが顎でしゃくった先には、熱いキスを交し合うリリーとジェームズ。
わたしは気恥ずかしくなって顔を逸らすと、「気が向いたらね」と呟いた。
「今しようぜ」
「嫌」
ー」
「そんな言い方しても無理――――っうわ!」

むぅと頬を膨らませたかと思ったら、次の瞬間には壁に押し付けられていた。
「させろよ」
綺麗に整った顔が近付いてくる。
わたしはその顔に、容赦無く両手を押し当てる。
「嫌ったら嫌だ」
「したい」
「命令口調直してもだめ」
「お前なぁ」

シリウスはわたしの両肩をまだ押さえつけたまま、ゆっくりと顔を離した。
不満げに眉を顰めた表情は、やはり綺麗に整っている。
思わず顔が熱くなるのを覚えて顔を逸らすと、すぐ傍にグリフィンドールのネクタイが見えた。驚いて顔を上げる。
「リーマス!」
「やぁ、
「盗み見とは、お前もなかなか悪趣味だな。しかもどうやってこの近距離まで・・・」
、このケダモノとはお別れして僕と紅茶を飲まないかい?」
「聞けよ」
シリウスが嫌味を込めてしかめ面で言った言葉をあっさりスルーして、リーマスがわたしに微笑んだ。
その誘いに、うんと笑顔で応える。

「じゃあ僕たちもご一緒させて頂こうかな」
ふと見ると、これまたいつの間にか近付いてきていたリリー・ジェームズ夫妻(って言うとリリーは怒る)がいた。
にこにこと嬉しそうなジェームズ、恥ずかしそうに、でも握られた手はそのままのリリー。
「ピーターも誘わなくちゃね」、とジェームズ。
「そういやあいつどこ行ったんだ?」、そう言ってシリウスは首をかしげる。
「きっと図書室でマクゴナガル先生の個人授業ね」、リリーがくすくすと笑って綺麗な髪を揺らす。
「うわー巻き込まれたくないなぁ」、リーマスは楽しそうに喉の奥で笑う。

わたしはみんなと一緒ににっこり笑うと、
図書室へと歩き出しながら(いつもはしてやんないけど)そっとシリウスの手を握った。



Fin.



あとがき
あ、あれ・・・?これって百合嬢親友夢じゃなかったっけか・・・?
これはわたしが初めて書いたHP夢をちょっくらいじってみたものです。初めて書いたのが百合嬢夢なんてわたしはどれだけ彼女が好きなんだ。ああ可愛いよ百合嬢その破壊的な愛でわたしの全身の骨を粉砕してくださいあぁぁ。
とか言いつつあなたはわんこのコレ(小指ピシー!)なので、
ていうことは作中のあのおいしい状況の中で黒犬があなたに何もしないということは有り得ないので、(←妄想
ちょおおおおおっと迫られてみました。ぬふ。

ということでっす!

080105[Sat]