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いつまでも続くと思うものほど脆く崩れ去っていく。 それでもただ、今だけは。 日々と曖昧 「」 「何よ」 「遊べよ」 「嫌だ」 「何で」 「向こう行け」 そう吐き捨てるように言うと、はソファに足を上げてつんとそっぽを向いた。 (むかむかむか) 「大人しく下がりなさい、ブラック。はあなたと話したくないのよ」 「・・・何でお前が出て来るんだよ、エバンス」 「こらこら。リリーに何かしたらいくら君でも許さないよー?シリウス」 シリウスが今にも噛み付きそうな顔でリリーに言葉を投げると、ジェームズの黒い笑みが光る。 チッと舌打ちすると、シリウスは窓辺の一人がけのソファにどっかと座った。 (むかむかむかむか) 午後10時半の談話室にいるのは、悪戯仕掛け人全員ととリリーの、いつもの6人だけだった。 「シリウス、そっち寒いよ。こっち来なよ」 暖炉から離れた窓辺に座るシリウスを心配してピーターが声を上げたが、 シリウスがちらりと一瞥すると小さく悲鳴を上げて黙った。 「そうだよ。明日は防衛術の試験があるんだよ、シリウス」 今度はリーマスがゆったりとした口調で言った。風邪でも引いたらどうするの、と続ける。 窓の外を見ると、確かに吹雪いていて、冷えた窓ガラスがかたかたと鳴った。 それにリーマスが言うのなら、とシリウスが立ち上がると、も同時に立ち上がった。 ?とリリーが見上げると、はぶっきらぼうに「もう寝る」と一言言って女子寮の階段を上った。 それを呆然と眺めながらシリウスは「何だあいつ」と開け放した口から搾り出した。 そしてずかずかと歩いていくと、先程までが座っていた暖炉の正面のソファに乱暴に座る。 (むかむかむかむかむか) するとが使っていたらしいタオルケットが指先にあたった。 持ち上げて凝視していると、自分の手先越しににやにやといやな笑顔を貼り付けたジェームズを発見した。 かっと頭に血が上り、シリウスはぐちゃぐちゃとそれを丸めるとジェームズに投げようとしたが、 思い直したように小脇に抱えた。 そしてふんと鼻を鳴らして一同から顔を逸らすと、「もう寝る」と言って男子寮への階段を上っていった。 その背中を見送ったあと、両手で口を塞いでいたジェームズがもう堪えきれないという風に噴き出だした。 それにつられてリーマス、ピーター、更にはリリーまで噴き出した。 「あ、あいつ・・・結局のこと凄く好きなんだよね」 ひぃひぃと腹を抱えながらジェームズは眼鏡を押しのけて涙を拭った。 「のタオルケットだって、何も持って行かなくたって・・・ぶくくっ」 もうだめ、ぎぶあっぷ、と言いながらジェームズがのた打ち回る。 「はは・・・触られたくないんだね、自分以外の人に」 「何だかブラックがとても小さい子どもに見えたわ」 リーマスも笑いすぎたせいか肩がまだ震えている。本当に、小さい子どもみたい。リリーが小さく零す。 それにあのふたり、そっくりなんですもの。 ジェームズははっとしたように立ち上がりリリーの座っているソファの肘掛けに座った。 「それだけ独占欲が強いってことさ。それを言うなら僕も小さい子どもだ、よっ・・・!」 最後の方は、リリーの肩に回した腕をリリー自身につねられてだいぶ苦しい告白になってしまった。 それを見てリーマスとピーターは互いに苦笑いを零すと、どちらからともなく「じゃあそろそろ」と立ち上がる。 リリーがはっとしたようにふたりを見るが、ジェームズががっちり腕を掴んでいて立ち上がれなかった。 ごゆっくり、とリーマスが微笑むと、ジェームズはにっこり笑ったがリリーは物凄い目で睨み付けた。 事の発端は、結局はいつもの言い合いだった。他愛もない話だった気がする。 なのにブラックは短時間でころっとそんなことは忘れてまたあたしにちょっかいを掛けようとする。 は枕に顔を押し付けると、はぁと短く息を吐き出した。 どうしてブラックはいつもああなんだろう。いつまでも怒っているのはあたしだけでさ。 話しているうちに段々と険悪になっていく空気を感じる度に、 自分のことをシリウスは嫌っているのだといつも思うようになった。 なのにどうしてあんなにちょっかいを掛けまくってくるのか。 好きなんだけどなぁ、と思わず口に出してしまい、は慌てて毛布を引っ張り上げた。 すると、いつも使っているタオルケットがないことに気付く。 「談話室に忘れて来たんだ・・・」 しかしは口をきゅっと結ぶと、体を丸めた。 シリウスがまだ談話室に残っているかも知れないと思い、明日にしようとひとり頷く。 きつく目を閉じると、たくさんの女の子に囲まれて楽しく話すシリウスの姿がよぎった。 きっと彼女たちとは、言い合いになったりはしないんだろうな。 「ブラックのばーか・・・女たらしー・・・」 言葉は途切れて、涙が皮膚を伝って枕にじわりと染みた。 いつになったら、告わせてくれるんだろうか。 目を開けるとシーツが眩しく目に刺さった。よ、と毛布をどかす。 はパジャマの上にローブを羽織ると、ルームメイトたちを起こさないように部屋を出た。 談話室には人がおらず、暖炉の上の大きな時計は午前6時過ぎを指していた。 いつもこの時間は人がまばらにいるはずなのに、ときょろきょろする。 まぁいいや、とは短く息を吐き、暖炉前のソファに向かった。 「・・・あれ?・・・ないし」 あるはずのタオルケットがソファの上から消えていた。 もう、と少し乱暴にソファに座ると、真正面の暖炉に火が入っていないのに気がついた。 そうか今日は休暇だった、と思いソファに深く身を沈める。 杖は持っていたが火をつける気にもならず、はローブの襟を首元に寄せると目を閉じた。 どれくらい眠っていたのだろうか。 はぱちぱちと火の爆ぜる音で目を覚ました。 目を擦ると視界が開けて、暖炉の上の時計が目に入る。午前6時40分。 そんなに長くは寝ていなかったのか、とまた思い瞼を擦る。目の前の暖炉にはいつの間にか火が入っていた。 そこでふと、自分の視界が斜めなのに気付いた。膝には足を覆うようにのタオルケットが掛けてある。 「これ・・・?」 そして自分の足のすぐ横に、長く投げ出された足が目に入った。 (ん?) そういえばさっきから頭が重い気がする。 そうっと顔を左に動かすと、顔面を柔らかい漆黒の髪がくすぐった。 何とかして少し前を覗き込むと、端正な顔立ちがどアップになった。 (ブ、ブラック!?) どきばくと心臓が面白いほどに跳ねた。 はすーすーという規則正しい寝息を耳元に感じながら、どうしようかと焦った。 握り締めた両手には、緊張のせいでじっとりと汗をかいている。 とりあえずこの場から逃げ出さなければ、と少しずつ右へ右へと体をずらそうとする。 しかしソファの継ぎ目に指がはまってしまい、がくんと体が揺れた。 「んー・・・」 案の定シリウスが眠そうな声を出して目を擦った。は後ろに手をついたまま体を強張らせる。 わしわしと頭を掻くと、シリウスはふとを見やった。 「・・・お前何してんの?」 「べ、別に」とどもりながら答える。シリウスは「あ、これさ」と言ってのタオルケットの端を引っ張った。 するとは「にぎゃあ!」と意味不明な叫びを上げて飛びすさり、別のソファの後ろに隠れた。 「おい?」 「何よ」 「何だよその態度」 「別に」 「覗きながら喋んなよ」 「いいでしょ別に」 「よくねーだろ」 「ブラックに関係ない」 「何で俺だけそうやって呼ぶわけ?」 「・・・は?」 今までぽんぽんと淡白な応答を繰り返していたのにいきなり話題を変えられて、 はぽかんと口を開けた。 シリウスは暖炉に目を向けて、構わず言葉を続ける。 「ジェームズもリーマスもピーターもエバンスもみんなファーストネーム呼びだろ」 何で俺だけいつまでたっても「ブラック」呼びなんだよ、と拗ねたように呟いた。 は開けていた口を閉じると、「ばかじゃないの」と声を絞り出した。 「呼んでほしいならそう言えばいいじゃない」 「は?前も言っただろ」 「言ってない」 「いーや、言った!」 「言ってない!」 「言った!」 「だって呼べるわけないじゃない!」 は隠れていたソファのクッションを掴むと、思い切りシリウスの方に投げつけた。 シリウスは不意打ちを喰らって「うわっ」と零しクッションとともに座ったままソファに倒れ込む。 ソファの背もたれをぎゅっと握ると、は呟くように言った。 「・・・だから呼べないのよ」 「え?」 「好きだから呼べないの!」 そう叫ぶと、は踵を返して女子寮へ続く階段の方へ駆け出した。 しかし難なく追い着いたシリウスに腕を掴まれ、大きな手で肩を引き寄せられた。 「好きだから呼べないの!」 そう言い放つと女子寮に向かって走り出したをとっさに追いかける。 腕を掴んで肩を引き寄せると、どん、との額がシリウスの胸にぶつかった。 シリウスは自分の鼓動がに聞こえはしないかと内心焦る。 「さっきの、マジ?」 はシリウスの腕の中で少し身じろぎしたが、「ほんとだよ」とふてくされたように返して来た。 細い両肩に手を置いて屈み、真正面からを見つめる。 一度ついと目を逸らし、涙を滲ませた瞳でもう一度はシリウスを見つめた。 「だから恥ずかしくて呼べないの、『シリウス』って」 そう言って目を伏せるに、シリウスは「呼べよ」と呟いた。思わず声が掠れる。 「呼べよ、」 「やだ」 「呼べよ」 「・・・」 「」 両肩に置いた手に力を入れると、がはっと目を上げた。 「呼んでくれよ」 もう一度ゆっくりと呟く。まるで懇願しているみたいだ、と自嘲した。 が唇を結ぶ。そして真っ直ぐシリウスの瞳を見つめると、「シリウス」とはっきりと口にした。 「シリウス」 「うん」 シリウスはそっとを引き寄せて抱きしめた。も今度は大人しく腕の中に納まる。 の肩に顔を埋めると、思わず「ふは」と笑いが漏れた。 「きもちわるいよ」 「うるせぇよ」 「自分が今何してるかわかってる?」 「わかってるよ」 「ファンの子達に殺されちゃうよ」 「関係ねぇよ」 「あたしがだよ」 「それは・・・困る、かも」 「かも」かよ、と突っ込みつつもシリウスの鼓動が自分と同じくらい早いことに気づいて、 は現実を確かめるかのように大きく息をする。 「なぁ」 「うん?」 「好きだ」 は心臓が爆発しそうになったのを自覚しながら、シリウスの背中に腕を回した。 すると自分を抱きしめるシリウスの両腕に力が入る。嬉しくなって、思わず笑みが零れてしまった。 耳元で、シリウスが嬉しそうに喉でくつくつと笑うのが聞こえて更に頬が緩んだ。 しかし肩にとんとんと何かを感じて、その笑みが引っ込む。 首だけで振り向くと、背後の女子寮の階段の2段上から、リリーがの肩をつついていた。 「り、リリー!」 そして慌ててシリウスの肩越しに男子寮の方を見やると、ジェームズが手で口を塞いで立っていた。 その後ろでリーマスとピーターが「きゃあ」という風にリアクションをとっている。 はジェームズの口を塞ぐ手の下にあるであろうにやにやした笑いを想像してうんざりした。 「シリウス」 「うん」 「みんな見てるよ」 「いいじゃん別に」 「ブラック」 が低い声でそう呼ぶと、シリウスは「わかったよ」としぶしぶ離れた。 リリーが仏頂面でを小突いて言う。 「あなたたち、ここが談話室ってわかってるかしら?」 とシリウスは顔を見合わせると、肩をすくめて笑った。 リーマスの「朝食にしようか」という一言に、全員が笑顔で頷いた。 End [あとがき] はい、2作目です!ぬぁ!(←テンション高 お前は黒犬夢しか書けんのかというほど犬夢のストックが多いのですが、いーえ連載は狼のみですええ!んでもって短編はメガネにも挑戦中です。 ええ、遅々として進んでいませんがね! ・・・頑張ります。 080107[Mon] |