ドリーム小説
出来ることなら、何もかもを知ってしまいたい
隠すのはやめにしていっそ全部話して傷つけてはくれませんか
そして重くて深い思い出を掻き消すほどの真摯な愛が欲しい
03. True memories disclosure
one after another.
父はイギリス人で生粋の魔法使い、母は東洋人で魔法使いとマグル(魔法使いの血筋ではない人たちをそう呼ぶらしい)のハーフで、ふたりは魔法を学ぶ学校、ホグワーツで出会った。20歳を過ぎてふたりとも職に就き2、3年が過ぎた頃、が産まれた。ふたりは幸せの絶頂だった。
しかしその時代にはもう既に、悪の帝王は世間を牛耳っていた(ダンブルドアは少し悲しそうな顔をして、その名前を教えてくれた。そして余り口には出さないように、とも)。父は魔法省という組織の闇払いという役職に就いていて、勇敢な仲間たちと共に闇の帝王を滅ぼそうと日夜奮闘していた。
彼の魔法の力は学生の頃から秀でていた、とダンブルドアは言った。おぬしの父上はの、。とても勇敢で賢くて、優秀な魔法使いじゃった。主席でホグワーツを卒業したんじゃよ。・・・本当に、素晴らしい魔法使いじゃった。
が3歳になってすぐのクリスマスの夜に、その時はやって来た。
闇の帝王の使いの者たちが一斉に、当時活躍していた闇払いたちの家に突入した。刃向かう者もそうでない者も、その家族たちもみな殺された。家々の目映い電飾は、瞬く間に掻き消された。
その連絡を受けたの父は、出来る限り強力な魔法を家中に張り巡らせて妻子を残し家を飛び出した。仲間を、その家族を守るため。そして何より、奴らが自分の妻子を襲う前に、何とかして止めなければ、と。
闇の帝王の力は強大だった。しかしの父も、大きな力を持っていた。帝王には死喰い人と呼ばれるしもべが数え切れないほどいたが、闇払いたちはその優秀な腕を持って死に物狂いで彼らに抵抗した。
そして彼らの、魔法省でもトップクラスの腕と闇の力を滅しようとする強靭な思いが遂に闇の軍団を撤退に追い込んだ。の父は重い足取りで家路を辿り、ふらふらになりながら自宅のドアまで辿り着いたが、闇の帝王の呪いの呪文によって蝕まれた心身は、もう限界だった。
そこまで語ると、ダンブルドアはふと口をつぐんだ。ティーカップを包むの両手がかたかたと震えるのをじっと見つめると、彼は小さく溜め息を零した。そんな、とは呟くが、その声は掠れていて聞き取りにくかった。
「お父さんとお母さんは・・・事故で死んだ、って・・・」
「そんなものは嘘じゃ」
ぴしゃりと否定すると、ダンブルドアは手を伸ばしの細い手首を掴んで、注意をこちらへ向けさせた。呆然と涙ぐむ瞳を見据えて、力を込めて言う。
「おぬしの父上は勇敢じゃった。偉大な魔法使いだったのじゃ、。あやつに真っ向から抵抗した。最後まで。決して事故などではない。あやつと戦ったのじゃ・・・みなを、守るために」
母上もそうじゃ、とダンブルドアは続けた。いつか迎えに来るとを施設に預け、もう一度復職した。夫を殺した闇の力を滅ぼすために。実は、彼女も闇払いだったのだ。しかし任務に出掛けた先で、彼女は仲間たちと共に闇の帝王のしもべたちに遭遇し、激しい戦いの末に息絶えた。
「――――みな仲間を愛し、妻を、夫を愛し、子どもたちを愛し、家族を愛した」
ダンブルドアは細い手首を掴んでいた手の力を緩めると、そっとの表情を見やった。泣いているだろうか。傷ついただろうか。やはりまだ、全てを話すには早かっただろうか。
しかしそれは杞憂だった。の瞳は、ダンブルドアの空色の瞳をしっかりと見据えていた。彼は少なからず驚いたが、はしっかりとした口調で言い切った。
「ダンブルドア“校長”、わたし、ホグワーツに入学します。お父さんやお母さんみたいになりたい。大切な人たちに出会って、そしてそんな人たちを、守りたいから」
ダイアゴン横丁は驚きの連続だった。
まず最初に、グリンゴッツで対面した両親の遺産の山にひっくり返りそうになり、そして感謝した。
そして通りを歩いてみれば、見たこともない動物たちや、孤児院にいた頃読んだ絵本の挿絵みたいな魔法使いの道具に、新型の美しい箒が飾られたショーウインドウ(張り付いて眺めていると中の子どもたちにじろじろとみられてしまった)があった。
そして何と言っても、魔法の杖。オリバンダーさんは変わった人だけれど、両親のことを何だか自慢げに語ってくれた。本当に、良い魔法使いでしたよ、と。
ダンブルドアは、忙しいはずなのにずっと買い物に付き合ってくれた。顔が広いらしく、道行く人にたくさん声を掛けられていたけれど、の姿を決して見失わなかった。
は15歳なので、教科書は6年生のものを買った。転入生という形で入学するらしい。ホグワーツは7年制らしいので、5年間もの差があるのについて行けるのかとは不安に思ったが、ダンブルドアは「心配するでない、」と笑った。
「我が校には素晴らしい教師たちが揃っておる。みな協力してくれるじゃろう」
「予習とかしたいけど・・・校外で魔法は使っちゃいけないんですよね」
「そうじゃ、じゃから予習は本を読むだけにしておいておくれ」
9月になれば、いやというほど呪文を唱えられるようになるからの。ダンブルドアは朗らかに笑った。
「ところでのう、」
漏れ鍋に帰り着くなり、ダンブルドアが苦々しい表情で切り出した。
「実は・・・・・・、ここには今日までしか泊まれんのじゃ」
「え・・・」、と言葉に詰まる。「今日まで、ですか?」
「うむ」
は目を伏せると、そうですか、と悲しげに呟いた。
「でも先生、わたし、行くところが・・・・・・」
「ああ、わかっておるよ、ジュン」
ダンブルドアは伯父一家の家は全て魔法によって修復されたと教えてくれた。忘却術という魔法で、一家や隣人たちなどあの夜のことを知る人の記憶はみなその部分だけ消してしまった、とも。
しかしはもうあの家に戻る気にはなれなかった。優しく親切にしてくれたダンブルドアを困らせることになろうとも、あの家に戻ることだけは、本当に避けたかった。
ううむ、と考え込むダンブルドアの表情を、は大鍋の取っ手を意味も無く指で擦りながらそろそろと見やった。考え込んでいるにしては楽しそうな瞳をしているその顔を不思議そうに眺めながら、はこれから始まる新しい生活のことをとりとめもなく考えた。9月になってしまえば、全寮制のホグワーツで魔法に埋もれた日々を送るのだ。何も心配することは無い。文句を言うようなこともない。――――しかし、本当に、あの家だけは。
「そうじゃ!」
ダンブルドアは電球がぱっと点る様な笑顔でそう言うと、改めてに向き直った。そうじゃ、そうそう。あそこがある。よし、うむ。あそこがいい。本当に良い場所じゃ。
「、今から部屋に戻って荷造りをしておいで」
「荷造り」
「うむ。トランクに服を詰めて、学用品は紐で縛って部屋の隅に置いておくとよい。運んでもらえるでの」
「運ぶ?って・・・どこへですか?」
「寮じゃよ。勉強をするなら教科書と本は服と一緒にトランクに詰めてしまうんじゃ」
さあ行った行った、わしは明日の朝7時にここへ迎えに来るからの、それまでに朝食を済ませておくんじゃぞ。ダンブルドアは何故か至極楽しげにそれだけ言ってしまうと、流れるような動作で漏れ鍋を出て行ってしまった。
「本当に、不思議なひとだなぁ・・・」
はきょとんとした表情を笑みに変えて、ゆっくりと階段を昇り始めた。
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3話upです!
「大丈夫大丈夫」と校長は言いますがわたしだったら絶対勉強について行けませんw(←
本当のことを知っても、その悲しみを力に出来るって凄いですよね。
[080209]